音楽はコンテンツの未来の続き


前回のが中途半端な記事になっていたので、少しだけ補足
音楽はコンテンツの未来 - ADAと電脳

ネットにおいてもロングテール現象には限界がある

当たり前の事実として、インターネットの素晴らしいメリットとして事実上無限とも言える仮想空間が存在すること、物理的な制約がないことがあります。それゆえ、Amazonのようなロングテール現象を生かしたサービスができると考えられていました。
ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略

でも、本当にそうだろうか?多様性をモットーとする世界においても、それには偏りがないか?情報が多いことは、選択肢が多いことは、消費者にとって望ましいことではない。選ぶコストがより増大してしまったのが現在だと言えます。だからこそ皆がAmazonのレビューを見ながらより売れている商品を、多くの人が評価しているものをという結果、より一極集中するのが実情だと思います。多くの人が同じ条件で情報収集を行えば、同じ方向に偏るのは必然です。


だからこそキュレーターなんて言葉が使われだしたわけですしね。その辺は佐々木俊尚さんあたりが言っている話ですね。情報を選別する能力に価値が生まれてくる。
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)

人が行う選別には同じ傾向が出やすい欠点がどうしてもありますし、いくらその自分が望むものだとしても、本質的に求めるのは新しい発見に他ならないので、本人が気になる&今までには知らなかった分野という難しい条件を満たすことが求められます。
連載第35回 Pandoraのライバルを研究すると日本のラジオ業界の未来が見えて来る | Musicman-net

「心に刺さったコメントがあったんです」

ウェスターグレンは振り返る。

「ランダムな選曲を混ぜてはどうか、というアイデアでした。突然変異で『進化』を生み出す仕組みを、ミュージックゲノムに組み込めばいい、と(※)」
(※ http://blog.pandora.com/pandora/archives/2011/10/meeting-dr-watson-co-discoverer-of-dna-and-creator-of-the-human-genome-project.html )

確かにその通りかもしれなかった。

Pandoraは一時期、ある発症に悩まされたことがある。ユーザーが長時間、聴くにつれ、似たような曲ばかりがかかるようになる、という問題だ。このときはアルゴリズムを大幅にチューニングして克服した。

この連載で語られていることはまさにここで、新しい発見を生み出すことがコンテンツ産業のおいて一番重要なことだという話です。ビジネスである以上、新しいコンテンツを知ってもらう仕組みづくりが課題となってきますからね。

ビッグデータ解析が重要

そのためには統計データ処理技術というのは外せません。ただし普通の場合の評価とは違い現時点では人間でしかまずそのコンテンツの評価を行うのは難しいです。Pandoraの実例が正しく、音楽や映像、小説、マンガのようなエンターテイメントの世界において、それの評価軸はとても難しく専門家によって行うしかありません。音楽なら波形データなど、コンピュータで評価しやすい要素があるので今後はより進むでしょうが。現時点では専門家と統計データのハイブリッド戦略が正しいと思います。

この分野の発展はまだまだなので、今では不可能と思えることでもいずれ可能になるでしょう。

サブスクリプションモデルにビジネスとしての持続可能性があるのかなーというのが今のポイントだと思っていて、どういうモデルが生き残るのかが気になります。連載を読む限り、それでもまだまだいろいろな方法が考えられるなーというくらい面白い事例が転がっているので、そこまで悲観的にはならないですね。


ただ、ミュージックゲノムはライセンス提供しようにもまだ使い物にならない。だからバーンズ&ノーブルは、開発援助の名目でお金をくれた。Pandoraにとって初めてのまともな売上だったかもしれない。だが金額は、わずか2万ドル(約250万円 125円/ドル)だった。

ウェスターグレンはめげずに様々なサイトへ売り込んだ。おかげでプロバイダ最大手AOLと家電最大手BestBuyがミュージックゲノムを採用してくれた。ただし、2社ともトライアル採用で、結局、売上は発生しなかった。

2002年にはもはや会社は火の車で、借金まみれになった。オフィスの家賃も支払えなくなり、ウェスターグレンの個人保証でなんとか支払う有様だった。この頃には共同創業者ジョン・クラフトは去っていた。
http://www.musicman-net.com/SPPJ01/35-2.html

まぁでもこんなことに興味なくったって、このMusic Genome Project っていう言葉だけでもPandoraの創業者の志の高さが分かるよね。何年も利益の出ない何も生み出さない会社を運営し続けてしまいには社員に給料を出せないという段階にまでいった後に、なんとか出資してくれる人に出会い、成功するっていうウェスターグレンの話は非常に面白いと思う。