『アルジャーノンに花束を』 ダニエル・キイス

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

アルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)

精神遅滞の青年チャーリーが脳手術によって高い知性を得るという話。

あんまり好みの話ではないのだけど、非常に面白かったのは自分が自分でなくなっていく恐怖について。自分が信じている自分はいつから発生した存在か。精神遅滞の青年チャーリーは手術後、かつて自分だったチャーリーを自分とは認識しない。もちろんそれが自分の中の一部であることは認めても、全く異質の存在にしか思えない。まぁこんなことは当然で、子供だった頃の自分を大人になった自分が同一視できないように絶対的な差がそこには存在する。それを知性とか記憶とか呼ぶのは何でも良いと思う。そんな中で己の記憶が崩れていくことを、自分が自分でなくなってしまうことを知覚出来ないままに過ごす恐怖は決して遠い次元の話ではない。認知症のように今は関係のない出来事であったとしても将来の可能性としては否定できない。

もっといろんな視点はあると思うけど、ちょっとね…。