『リフレイン』 沢村凛

究極的な意味での本当の平和、いわば、人が絶対に争うことが無い社会を目指すとしたらどうなるのか?という本当に幻想としか思えない思想を掲げた人々が登場する話です。

常々思うのは、絶対に人は争うし、それが生き物としての宿命なのだから…、という視点で考えますが、結構この問いへの回答が面白くて、というかこれしかないという回答でもあります。つまり死刑制度です。テーマ的には死刑制度の是非といった点にもあるかもしれませんが、この争いを防ぐにはどんな理由であっても例外無く人を殺害したら、死刑になるという星の人が登場する。彼らの祖先は絶対的なルールこそ、人々から殺し合いを防ぐ唯一の手段として、「死刑」を取り入れている。もっとも教育的にも徹底的に理想的な思想を人々に施しているからこそ、意味を持ちます。

まぁその辺結構面白いんですが、無人の惑星に文明人が不時着して、何年もそこで暮らすというのが好きです。惑星間航行ができるレベルの文明人の人が何もない無人の惑星に放り込まれる。やがてそこで生活をする過程で、人が社会を形成するのが面白かった。サバイバルモノでもここまで大人数のは読んだことがなかったので新鮮だった。そもそも人数が一定以下だとグループが分かれることもない。サバイバルでありながら、一つの社会が成立しているんだよね。だからこそ、国を作るまでになる。

何もない状況に追い込まれると人間ってテクノロジーに囲まれた生活を経ていても、やっぱり動物であることに変わりはない。ひとだび、体ひとつで世界に放り出されると、ただ食べ物を食べるって幸せみたいな原始的なレベルの幸せを感じることができるんだというのが、とっても好きだった。この辺にただの人間である限界とその良さがあるんだけど。