『レイヤー化する世界 テクノロジーとの共犯関係が始まる』 佐々木俊尚

レイヤー化する世界 テクノロジーとの共犯関係が始まる (NHK出版新書)
今世界の大きな流れはどうなっているのかについて考えている本。

支配構造の変化

述べられていることの大半は『企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』で書かれていたことです。世界を大きく支配する仕組みとますして、20世紀までは国が大きな力を持っていて、そしてウチとソトという先進国とその他といった区分によって繁栄がもたらされていた時代でありました。しかし21世紀の現在、巨大になった企業は国という枠組みを超えた超多国籍企業として世界そのものをフィールドに活躍しています。その中では国の権力といったものは意味をなさず、今を支配するのはいろんな場を支配する巨大企業群であるという話です。場とはAppleiTunesのようにコンテンツのプラットフォームのような仕組みのことを指します。インターネットの登場によってそういった仕組みそのものがあっという間に全世界に広がって、強力な力を持ち始めています。

国民国家や民主主義といった概念が消えていく中で、もたらされる新しい社会とは様々な「場」が存在する社会です。ようは世界がフラット化していき、多数のレイヤーによって構成される社会。そしてその最下層に支配する巨大企業の「場」があるということです。
税金問題で米議会との「対決」が迫るアップルのティム・クック - ZDNet Japan
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130608-00000534-san-n_ame

正直なところ、この本よりは『企業が「帝国化」する」の方が詳しく述べられているので興味があればそちらをお勧めします。といってもIT業界をしらない、もしくは10代の人なんかはこちらの方が分かりやすいかもしれません。


この本のポイントは中世あたりからの支配構造の変遷も含めた大きな枠組みを説明しているので、知識がなければないほど面白いかもしれません。西洋の歴史観によってヨーロッパが歴史の中心のような考え方をしている人にとってはなおさらです。蛮族と呼ばれていたヨーロッパの人々が世界の中心になるまでの流れというのはとても面白い。とはいっても、詳しく読んでいくならば、それぞれいろんな本を読む必要があるでしょう。最後にあとがきで書かれている参考文献なんかは特に。自分はローマくらいしか読んでいないので、まだまだ読まなければいけないモノが多いですね。

ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)

ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)