『LIFE OF PI』アン・リー監督

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 4枚組コレクターズ・エディション(特製ブックレット付) (初回生産限定) [Blu-ray]
とにかく映像が素晴らしかった。

ストーリーは至って単純で、船が沈没し運良く生き延びた少年がトラとともに漂流するというお話。シチュエーションがシンプルかつ精神的な部分が多くを占める映画なので、制作陣もかなり苦労した作品みたいです。まず凄いのがCGのトラの再現度だと思う。今の時代昔に比べればCGのクオリティは上がっているそれでも、多くの作品が完璧な出来であるわけではない。とくに動物なんかは良いCGモデルだけでなく、現実のトラに即したアニメーションがなければ成立しない。

撮影には数体の本物のトラが実際に使われていて、一部シーンは本物のトラだ。正直、見ていてどのシーンが本物でCGかというのは区別がつかなかった。人間の認識能力は人間の方が高いはずなので、もしCGの人間ならば見分けられた可能性はあるが、今回のトラはかなり難しかった。実際監督も含めて騙されるレベルのようでした。

映像的表現は非常に幻想的で、海を漂流すれば、誰だって神の存在を信じるしかなくなるというのは少し分かる気がしました。たとえ、無宗教でもね。大自然のまっただ中にいるという環境は偶然も必然もないのかもしれないけれど、精神はそれを必要としている。何もないと思うことほど辛いことはない。そこには何らかの意味があると思わなければ生きていくことはとても難しい。トラの存在に生きる動機をもらったパイのように。

純粋に映像だけでも非常に価値のある映画だと思う。