『パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ』 ミチオカク

パラレルワールド 11次元の宇宙から超空間へ
先に「2100年の科学ライフ」という本を読んで気に入ったので、読んでみました。この著者のミチオカクは理論物理学者であり、パラレルワールドについてはまさに専門分野と言えます。この宇宙を支配する法則とは何なのか?という問いは過去からずっと多くの科学者たちが考え続けている問題です。まずはニュートン力学に始まり、そしてアインシュタイン一般相対性理論量子論と続く謎です。

この本ではニュートンの発見から宇宙論がどのように進歩してきたかが書かれている。アインシュタイン移行の流れというのは断片的な情報としては知っていても、こうやって歴史的流れを踏まえて、説明してあるので非常に面白かった。エヴェレットの多世界解釈はSFでも良く用いられる話で、量子論はこの世界を一つでない、平行宇宙の存在、パラレルワールドの可能性を示唆する。シュレディンガーの猫の問題で「猫は死んでいるのか生きているのか」というときに「自然はどうやって猫の最終的な状態を『選択する』のか(=波動関数は収縮するのか?)という疑問に答える。

万物理論

そして一般相対性理論量子論の溝を埋める、最後の理論、万物理論に直面しているのが現代の物理学といえます。万物理論というワードはSFにおても登場するモノで、実際「万物理論」というタイトルの小説もあります。

万物理論 (創元SF文庫)

万物理論 (創元SF文庫)

今考えられている理論にはひも理論とその最新の形態であるM理論があります。ひも理論がオイラーのベータ関数が原子より小さな世界を記述できるように見えたことが発端で生まれた理論だったということは知りませんでした。先に数式が発見されて、どんな物理法則がこの理論を支えているのかが分からないというのはとても面白い。
シュリニヴァーサ・ラマヌジャン - Wikipedia
他にもインド人のラヌマジャンという人の生涯もとても興味深い。貧しく孤独に生きる彼が、多くの数学的定理を独力で導き出していたという事実と、彼の残したノートにあった楕円モジュラー関数は24次元でのみ美しい数学的特性を有し、八次元に一般化すると、ひも理論にそのまま応用できることが分かる。そんなエピソードとかを読むとこんなことが実際にあったのかと驚きます。

「子供のころ、私はよく遠い未来の暮らしはどんなものだろうと考えた。だが今では、好きな時代に生きられるとしても、現代を選ぶだろう。」

今を生きる人間として一番面白い時代に生きている事実に気がつかなければならないと、著者は言う。実際問題として、大きな時代の変わり目に生きているのは確かでとてもそれは幸運なことだと思う。