『世界はひとつの教室』  サルマン・カーン

世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション
「質の高い教育を、無料で、世界中のすべての人に提供する」というコンセプトでレッスンビデオをオンラインで配信するカーンアカデミという教育プラットフォームがある。その創業者であるサルマン・カーンが教育について書いた本で、非常に面白かった。

単純にレッスンをオンラインで配信するというスタイル自体には何ら目新しいものはなく、何がポイントなのだろう?と思って読むと、彼が教育についてどう考えているかがよく分かる。ここで挙げられている、今の学校での勉強方法の問題点は以下の主に三つ

・授業が1コマ単位に分割されていること
・理解度が100%でなくとも次へ進んでしまうこと
・学ぶペースに自由度がないこと

そして重要なのが知識とは必ず他の知識と関連性があり、独立したものはないということ。これを念頭におかれた学び方になってはいなければ理解には中々繋がらないでしょう。勉強をするモチベーションで大事なのが面白いと思えることだと思うのですが、単一の知識を覚えることには何ら喜びはありません。

普通に生きているとそこに気づいて面白いと思えるのは、ある程度自分の中で積み重ねがあってからなんですよね。ちょうど同じタイミングで読んだ下の記事なんかもまさしく同じことを語っていて、面白いです。

映像を見せる前後や途中で、オヤジの授業が繰り広げられ、物事の見方を教え込んでいくのです。この「視点」というのが特に重要で、結局「○○の事件があった」とか「この偉業は○○が達成した」という知識ではなく、その知識を学ぶことを通して、新しい物事の見方や捉え方ができるようになることに意味があるんだ、ということを子どもながらに実感していきます。勉強の目的は知識を得ることではないということをオヤジは伝えたかったのだろうなぁ。http://storys.jp/story/8298

上のモデルは教育としては非常に理想的だと思います。しかしながらこの手法はこの父親が多ジャンルに精通し、とても教養のある人であったから成立する話です。もちろん、学ぶ手段の選択肢という意味では、現代は多様で以前よりは平等に近付いているとは思います。しかし、最初に学ぶモチベーションを与えられるかが一番重要で、これについては今の学校では中々出来ません。つまり親が学ぶ面白さを提供できないと、子どもが勉強することに興味を持ってくれません。

それらを解決するためにカーンアカデミーは存在するという話です。上の教育オヤジの息子の方は現在教育について取り組んでいるみたいですし、皆同じ問題意識を持っているんですよね。でも、なぜ今まで変えられなかったのだろう?と考えるとやっぱりタイミングなんですよね。本書でも述べられているんですが、この手法を実践するには膨大な教材が必要で、それに対するコストを今までの紙の教材で行っていては到底出来ないことでした。教育オヤジの話でも、ここの家庭は教育に関してかなりの投資を行っています(教材となる本やマンガ、映像など様々)。それが出来るようになったのは、インターネットが広範囲に普及してビデオレッスンを提供するハードルが非常に低くなったからと言えます。これらはIT全般に言えることですが。


勉強するにはいい時代になっていると本当に思いますね。