『ルールを変える思考法』川上量生

ルールを変える思考法 (角川EPUB選書)
意外に面白かった。

ドワンゴで雇っていたゲーマー社員の話なんかは非常に興味深いです。この本ではゲーム的な思考が経営にも活かせるか?という視点でエピソードは語られるけども、途中にある対談の、まだオンラインゲームがスタートしたばかりの頃の「PK(プレイヤーキル)についての話が面白い。相手プレイヤーを殺したときに、アイテムを奪うことができて、その中に「生活」を感じてしまうと、PKができなくなってしまったというのはなるほどなーって思いました。ゲームの世界においても、相手に物語を感じてしまったら、たとえ相手のアバターで実世界の生身の人間には影響を与えることがなくても(精神的には別ですが)、罪悪感がおきてしまうんですね。理解はできるし、とても自然なんですけど、PKが楽しくってやりまくってた人がそう思うに至るってのが中々面白いです。


もう一つ気になったのが

現代社会はすでに、宇宙人の目から見ても、人間が地球を支配しているようには映らなくなっているのかもしれません。人間という生命体が個々の「パーツ」として働いていても、実際に地球を支配しているのは、人間を素子とする巨大なネットワークであるように見えているのではないでしょうか

この話って、とても分かることで「東のエデン」で、ニートでもたくさんの人数がいれば集合知として十分に利用できるって話がありました。この時はポジティブな描かれ方をしていたとは思いますが、本当にそうだろうか?といつも思っていました。
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幸か不幸か、自分で考えなくとも解答は誰かが用意してくれている。インターネットで検索すれば分かることは覚える必要はない。外部記憶があるのだから、考えることにフォーカスしようっていう言説がよくあります。でも現実にそれが出来るのは全員ではありません。それに対して不安感を覚えるからこそ、抗いたいと考えている川上さんのポジションってのはとても好きです。

そもそもの前提として、機械やコンピュータの進歩によって「人が必要とされる場所が少なくなっていく」というのは間違いのない事実だと思っています。

「大量に発生するであろう暇な人たちを使って何かできないか」、もう少し言えば「そうやって何か面白いことがしたい」そういう人がいて、それがニコニコ動画のテーマと分かると、この川上さんという人はとても面白いなーと感じました。