『東京女子図鑑』 タナダユキ監督

第一話・序章『秋田生まれの女の子』

東京カレンダーの連載が原作のAmazonプライムビデオで配信されているドラマなんですが、普通のドラマとは違い街とそこに住む人を中心に、東京に夢見る女性の20年を描く内容で非常に面白かったです。

 

全体の語り口は主人公の一人称で進みつつも、時折いろんな人の毒づいた語りも混ざっていて、東京を生きる女性を取り巻く環境をとてもリアルに表現しています。三元茶屋編から始まり、恵比寿編、銀座編、豊洲編、代々木上原編と、それぞれの社会的ステージごとに住む街の特色を周りの人間関係から感じさせてくれる面白いドラマです。

 

序盤はドキュメンタリー風な側面が強いなと思っていましたが、「人に羨ましがられる人間になりたい」というちょっと歪んだ欲望がどのように実現されていくのか、女性に降りかかる「結婚して子供を産むことが幸せなのだ」呪いのような一般的価値観の圧力を受けながら、どう変化していくのか、変わらないのかという話が主軸にあります。

 

その点、このドラマの着地点は良かったです。終盤、東京には自分がいくら足掻こうとも、勝ちようのないステータスを持った人たちがいくらでもいて、そんな人たちに負けていく自分に嫌気が差して、一度田舎に戻ります。井の中の蛙でもいいや、ここで人生を終えてもと思っているところに、高校の時の先生に出会って、進路指導の時にあなたの話をいつもしていると、雑誌の切り抜きに写る自分を見て泣いてしまいます。

そこから立ち直り、東京へ戻り、また新たな結婚をして、こんなセリフで終わります。

「頑張りましょ。次から次に、手に入れたいものは増えていくんですから」 

 

結構、毒づいた語りが多いドラマなので、「人に羨ましがられる人間になりたい」ってそんな価値観を持っていたままでは幸せにはなれないよね?、普通の幸せってこんなところにあったんだよって終わり方をするんじゃないかと思っていましたけど、変わらなかったんですよね。

 

でもそれで良かったなと思えるくらいには、20年東京で生きていた綾の人生だって悪くはないはずで、際限のない欲望に振り回されたって、人によってはそんなの不幸だって思うかもしれないけど、私はその道がいいんだっていう最終回に感じたので、満足なドラマでした。