『天冥の標VII 新世界ハーブC 』小川一水

天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC

この巻では、第1巻の舞台である28世紀のハーブCがどのように作られていったかが描かれます。その内容は「残存人類」という言葉に代表されるように、非常に過酷で、自分たちは本当に生き残れるのか?、一体何をすることが正解なのか?何一つ分からない中で起こる悲劇と選択、生き残った人類の中で社会が形成されるまでの物語です。

 

人類が滅びたに等しい世界で少人数の人間たちで社会が形成されていく物語は過去にも読んだことがありますが、5万人と非常に人数が多く、そして成人は2%しかいないなんてシチュエーションでの生活は、要求される過酷さが一段と厳しく辛い話でした。この規模までいくと、秩序を保つための強制力なしには一瞬で破綻し、迷う時間も、話し合いによる解決に至る時間もありません。常に正しい選択など出来ない世界で、人類として生き残るのか、人として生きていたいのか?というこの二つに揺れていく、そして決裂していく人間たちが描かれていて、非常に面白かったです。

 

正直に言って、第1巻のメニーメニーシープの世界を素直に受け取っていた自分としては、その世界の成り立ちや、その背景が、この過酷な世界から生み出されたものだと知り、驚き、そして納得しました。ここまでの500年近い歴史を見せつけられた上で起きる人類滅亡寸前の惨劇と、それでも生きていく人類がどのような結末を迎えるのか楽しみでなりません。