『天冥の標Ⅵ 宿怨』小川一水

天冥の標Ⅵ 宿怨 PART3

ようやく「天冥の標」の1巻へと続く、VI 宿怨に辿り着きました。

 

ネタバレありきで書きますけど、色々な謎が繋がってきて、たくさんの、本当にたくさんの人間や人間でない何かの思惑のぶつかり合いによって、人類が太陽系世界が追い詰められる話になりました。

 

天冥の標は致死率95%の感染症患者が完治することがないまま生き続けることから生まれる人間たち「救世群」の憎しみの連鎖と、それを乗り越えることが出来ないままの人類の物語です。しかし、そこに人類だけではないロボットや、地球外知性まで含まれる壮大な時間スケールで展開されるところに魅力があります。

 

VI 宿怨では、救世群のトップとなったミヒルが人類を滅ぼすレベルのパンデミックを引き起こしてしまう。そして、人間に奉仕するロボットが、「救世群」の人間を救うことはもう出来なくなってしまったと判断したときに別れの挨拶しに来るシーンがとても好きでした。

 

「なんとかしなさい!」

「努力はした。物理学と社会科学の許す限り」

...中略

「それで?」

「それで、挨拶に来たんだ。さようなら、と」

 

救世群たちの救われなさは、当然の帰結ではあるのですが、それでも、それでも悲しまずにはいられないほど、彼ら彼女らの苦悩も理解は出来る。ミヒルが狂うのも、救世群の社会を維持し続けるために、どんどん過激な思想に染まっていくその流れも、500年続くその物語を見ていたら、何も言えなくなるほどに。

 

ここからどう展開していくのか非常に楽しみです。